パートナー 弁護士・弁理士 王勇
国家知識産権局は2025年11月10日、第84号局令を発表し、『専利審査指南』(以下「指南」という)第二部分第四章第6.4節を改正し、「技術的課題の解決に貢献していない特徴」は通常、創造性の評価に影響を与えないことを明確にした。創造性の審査基準は従来より特許出願および審査における焦点かつ難点であるため、今回の改正は業界内で広範な関心と議論を呼んでいる。本稿では、改正の背景、法理的論理、技術的課題における貢献度の分析、実務対応という4つの観点から、今回の改正が創造性審査に与える影響を考察する。
改正前後の対照表
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『専利審査指南』(第77号局令) |
『専利審査指南』(第84号局令による改正後) |
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第二部分第四章 6.4 保護を求める発明に対する審査 発明が創造性を有するか否かは、保護を求める発明に対して判断されるものであるため、発明の創造性の評価は、特許請求の範囲で限定された技術的解決手段に対して行わなければならない。発明が先行技術に対して貢献する技術的特徴、例えば発明に予期せぬ技術的効果をもたらす技術的特徴や、発明が技術的偏見を克服することを反映する特徴は、特許請求の範囲に記載しなければならない。そうでなければ、たとえ明細書に記載されたとしても、発明の創造性を評価する際には考慮しない。さらに、創造性の判断については、特定の技術的特徴が創造性を有するか否かを評価するのではなく、特許請求の範囲で限定された技術的解決手段全体を評価対象とし、すなわち技術的解決手段全体が創造性を有するか否かを評価しなければならない。
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第二部分第四章 6.4 保護を求める発明に対する審査 発明が創造性を有するか否かは、保護を求める発明に対して判断されるものであるため、発明の創造性の評価は、特許請求の範囲で限定された技術的解決手段に対して行わなければならない。創造性を判断する際には、特定の技術的特徴が創造性を有するか否かを評価するのではなく、特許請求の範囲で限定された技術的解決手段全体を評価対象とし、すなわち技術的解決手段全体が創造性を有するか否かを評価しなければならない。 発明が先行技術に対して貢献する技術的特徴、例えば発明に予期せぬ技術的効果をもたらす技術的特徴や、発明が技術的偏見を克服することを反映する特徴は、特許請求の範囲に記載しなければならない。そうでなければ、たとえ明細書に記載されたとしても、発明の創造性を評価する際には考慮しない。 【例】 カメラに関する発明であって、発明が解決しようとする技術的課題は、より柔軟なシャッター制御をいかに実現するかであり、この技術的課題は、カメラ内部の関連する機械的な構造及び回路的な構造を改良することによって解決されるものである。審査官に特許請求の範囲に創造性がないと指摘された後、出願人は特許請求の範囲に、カメラ筐体の形状、表示画面のサイズ、バッテリー収納部の位置などの特徴を追加した。明細書には、特許請求の範囲に新たに追加された特徴が前述の技術的課題の解決と何らかの関連性があることを説明しておらず、これらの追加された特徴は、特許請求の範囲の主題自体が暗黙的に有する一般的な構成要素であるか、当業者が通常の技術的知識と一般的な実験手段に基づいて得られるものであり、出願人はこれらの技術的特徴が保護を求める技術的解決手段に何らかのさらなる技術的効果をもたらすことを証明する証拠または十分な理由も提供していない。したがって、上記の技術的特徴は、前述の技術的課題の解決に貢献せず、保護を求める技術的解決手段に創造性をもたらすことはない。
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一. 改正の性質:基準の劇的変更か、それとも規則の具体化か?
今回の改正について、業界が最も注目しているのは、創造性の審査基準に実質的な変化があったかどうかである。公式的な解釈と法理的の論理分析に基づき、今回の改正が「安定性」と「指針性」という顕著な特徴を示していると筆者は考えている。
1.審査制度の安定性
今回の改正では、創造性の評価は依然として従来の『指南』で規定された「三歩法(スリーステップ法)」(すなわち、最も近い先行技術の確定、発明が実際に解決する技術的課題の確定、先行技術から技術的示唆が与えられているかどうかの判断)に従って行わなければならないことを明確に指摘している。これは、創造性審査の基礎となる論理と原則が根本的に変化したものではないことを意味する。したがって、審査官は特許請求の範囲を審査する際、依然として調査に基づいて基準を確立し、引用文献との比較を通じて相違する技術的特徴を特定し、当業者の視点に基づいて、その改良が自明であるかどうかを判断する必要がある。よって、今回の改正は創造性審査制度の根本的な変更ではなく、既存の枠組みに対する部分的な最適化である。
2.実務経験のガイドライン化
実際、過去長年にわたる審査実務において、特許請求の範囲に公知の常識や慣用の技術的手段が大量に羅列されている事案に対して、審査官は一般的かつ成熟した審査習慣を形成してきた。すなわち、特許請求の範囲に多数の相違特徴が含まれる場合、それらの特徴が単に当該技術分野における一般的な手段であり、かつ相乗効果を生み出していないのであれば、審査官は通常、それらを統括し、創造的貢献がないとまとめて論述する傾向がある。今回の改正は、この長年存在している審査慣行を単に公式の規則制度として格上げしたものであり、その目的は審査官と業界に対して明確な指針を与え、審査基準の一貫性と予見可能性を高め、異なる審査官間の主観的な理解の差異に起因する基準のばらつきを減少させることにある。
二. 核心的な改正の分析:技術的貢献度と全体性の評価
今回の改正の核心は、「技術的貢献」という概念を具体化すること、および「全体性の原則」の審査プロセスにおける位置付けを再確立することにある。
1.「全体性の原則」の位置の前倒し
今回の改正では、「特許請求の範囲によって限定される技術的解決手段全体に対して評価しなければならない」という記述が、該当する節の末尾から第一段落の末尾に移動された。この変更には一定の象徴的意味があり、審査官に対し、「特徴の比較」という固定観念にとらわれず、特許請求の範囲に触れた時点から、技術的解決手段の「全体観」を確立しなければならないことを要求すると同時に、出願人に対し、相違する技術的特徴の「量」が創造性の「質」に等しいものではないという明確なメッセージを伝えている。従来技術との相違の複数の特徴が単に先行技術の特徴の単純な累積や寄せ集めに過ぎないのであれば、その創造性の高さは、質的変化をもたらす単一の核心的特徴に遠く及ばない可能性がある。
2.「貢献分析」手法の積極的な活用
今回の改正は、創造性判断における「貢献分析」の位置付けを強調している。この規定に基づき、特許請求の範囲における従来技術との相違の特徴を、貢献のある特徴の集合と貢献のない特徴の集合の2つに分類することができる。ここでいう貢献のある特徴とは、発明に予期せぬ技術的効果をもたらす技術的特徴、または技術的偏見の克服を反映する技術的特徴を指し、発明の技術的課題の解決に貢献したものであり、この種の特徴は創造性の「魂」であり、特許請求の範囲に記載されなければならない。さもなければ、明細書に記載されていたとしても、創造性の評価時に考慮されることはない。一方、貢献のない特徴とは、発明が解決しようとする技術的課題と無関係な特徴、または当該分野で一般的または暗黙的な特徴を指す。改正の『指南』では、たとえこれらの貢献のない特徴が特許請求の範囲に記載されていたとしても、創造性の評価時には無視しなければならないと明確に規定している。
三. 深層解剖:技術的課題における特徴の関連性と組み合わせの分析
代理業務および審査実務において、最も複雑でありながら頻繁に生じる状況は、特許請求の範囲に従来技術との相違の複数の特徴が含まれるケースである。これらの特徴は同一の技術的方向性を指し、一つまたは複数の技術的課題の解決に用いられる場合もあれば、異なる技術的方向性を指し、異なる技術的課題の解決に用いられる場合もある。改正『指南』に基づき、どの技術的特徴が「貢献」をなすのかを確定することは、今後、創造性の評価において直面する難点となるだろう。筆者は、以下の2つの観点から分析および論証を進めることが可能であると考える。
1. 単一の技術的課題への統合的貢献
ある独立項のすべての従来技術との相違の技術的特徴が、集合的に直接的または間接的に同一の技術的課題の解決に向けられ、かつそれらが機能的に相互支援または相互作用の関係にある場合、これらの各々の技術的特徴は、その課題解決に対して貢献があるとみなすことができるため、全体として考慮されなければならない。このような状況下では、創造性に関する答弁を行う際、出願人は特徴間の「化学反応」または「相乗効果」、すなわち特徴Aがいかにして特徴Bの適用前提を創出したか、または特徴AとBが結合された後にいかにして「1+1>2」の技術的効果を生み出したかを強調すべきである。この文脈において、各技術的特徴は創造性の高さを構成する要素となる。
2. .複数の技術的課題が併存する場合
実務上、独立項の従来技術との相違の複数の技術的特徴の「それぞれが独自に機能する」状況が頻繁に生じる。今回の改正で提供された例示を例にとると、技術的特徴A(機械的な構造)、B(回路的な構造)、C(制御方式)はカメラのシャッターの構造に関連し、協働してカメラのシャッター制御の構造を改良し、「シャッター制御の柔軟性」という課題(課題X)を解決するために用いられる。一方、技術的特徴D、Eは筐体の色や表示画面のサイズに関わり、「視覚的美感」または「携帯性」の課題(課題Y)を解決するために用いられる。審査実務および今回の改正の趣旨によれば、明細書においては特徴D、Eと核心的な課題Xの解決との間に関連性が一切記載されておらず、かつそれらが当該技術分野における一般的な手段に属する場合、創造性の評価に際して、特徴D、Eは技術的課題Xの解決に対して「貢献のない特徴」であると認定されることになる。
また、技術的特徴の集合{A, B, C}と{D, E}との間に相乗効果がなく、同一の技術的課題を共同で解決するのではなく、それぞれが異なる技術的課題を解決している場合、当該特許請求の範囲は法理上、実質的に2つの異なる技術的解決手段の単純な組み合わせとみなされる。出願人は、そのいずれかの技術的解決手段(通常は、比較的革新的な方、例えば、課題Xに対する解決手段)を選択して創造性に関する答弁を行うことができる。もちろん、両方の技術的解決手段に創造性が認められる可能性がある場合、出願人は2つの解決手段に対して、それぞれ創造性に関する答弁を行うことも可能である。この状況は通常、出願書類の不適切な作成に起因する。なぜなら、経験豊富な代理人であれば、最初からこれらを異なる独立項として作成したり、別々の出願で保護を求めたり、それらの創造性の程度に応じて主従を分けたりすることが可能だったからである。
したがって、出願人は、技術的特徴D、Eがすでに技術的課題Xに対して「貢献がない」と認定されているため、これらが全体の解決手段に追加の創造的価値を提供し得ないことを明確に認識しなければならない。核心的な技術的特徴{A, B, C}が先行技術によってカバーされているか、自明であると判断された場合、どれほど多くのDやEを追加しても、当該特許権または特許出願の運命を救うことはできない。
四. 実務対応策に関する提案
1. 出願段階
代理人と発明者は、出願時に発明が解決しようとする技術的課題と解決可能な技術的課題を十分に認識し、発明のコンセプトを正確に練り上げ、核心的な技術的貢献に焦点を当てなければならない。それに対応して、独立項は、特定の技術的課題の解決に対して真に貢献する特徴に焦点を当て、特徴を「少なく、精巧に」明確にすべきである。これにより、創造性が認められやすくなるだけでなく、特許請求の範囲に不要な技術的特徴の追加を回避し、創造性が認められた上で、可能な限り広い保護範囲を確保することができる。また、明細書を作成する際、特許請求の範囲に記載されるすべての重要な技術的特徴と技術的課題との間の対応関係を明確に記載し、論理的推理、理論的推論、または実験的検証などの手段を通じて、技術的特徴と技術的課題との間の因果関係を構築しなければならない。
今回の改正で提供された例示を例にとると、出願人は技術的貢献を強調する以下の方法で出願書類を作成することができる。
従来技術と相違する技術的特徴:回路制御モジュールに特定の信号フィードバック回路を追加し(特徴A)、さらにシャッター駆動用電磁石の電流補償アルゴリズムの改良(特徴B)を組み合わせる。
対応する技術的課題:高速連続撮影時におけるシャッターの応答の遅延のばらつきを解決し、より柔軟で正確なシャッター制御を実現する。
対応する技術的効果:特徴Aによりシャッターの状態をリアルタイムで監視し、特徴Bにより電流を動的に補償することにより、シャッターの応答時間の偏差を低減し、高速連続撮影における焦点ズレの発生を効果的に回避する。
明らかに、特徴AとBは技術的課題の解決に直接貢献しており、創造性を評価する基盤となり得る。
逆に、明細書および特許請求の範囲において、例えば、「筐体に流線形デザインを採用し(特徴C)、表示画面サイズを5.5インチに拡大する(特徴D)」のような技術的特徴が記載されている場合、これらに対応する技術的課題はカメラの外観と視認性の向上である。
審査過程において、発明の核心的な課題が「シャッター制御」であると認定されれば、特徴CとDは当該課題の解決とは何ら機能的関連性を有しない。創造性の評価において、これらの特徴は技術的課題の解決に貢献しないと認定されることになる。
ある特徴(特定の表示画面のサイズなど)が特定の状況下で確かに核心的な機能(シャッターのオートフォーカスの速度の補助など)に影響を与えるのであれば、明細書にはこのような因果関係を詳細に記載し、データ、構造または理論的な根拠で裏付ける必要がある。
2. 応答段階
創造性に関する意見に応答する際、特徴の単純な羅列戦術を徹底的に捨て去り、「貢献度」の論証へと転換しなければならない。応答の重点は、術来技術と相違する技術的特徴がなぜ、そしていかにして技術的課題の解決に貢献したのかを論じることに置くべきである。これには、代理人により高い技術的理解力、すなわち、物理的メカニズム、回路の論理、化学反応などの基礎原理から出発して、術来技術と相違する技術的特徴が技術的課題の解決に対していかに不可欠であるかを論証する能力が求められる。また、証拠に対する意識を強化し、比較実験のデータやテスト報告書などを積極的に活用して技術的效果を証明すべきである。技術的效果を論証する際、明細書に記載された比較実験のデータ、テスト報告書、またはシミュレーション結果を優先的に使用すべきである。客観的証拠こそが、「貢献がない」との認定に反論する最も強力な手段である。
五. 結論:創造性の法的本質の強調
2025年版『指南』の改正は、創造性のハードルを引き上げたものではなく、運用規則を具体化することにより、「特徴の羅列」という投機的な手法を制度的に阻むものである。これは出願人と代理人に対して、創造性とは、発明の革新性の高さに対する法律の尊重であり、それは特許請求の範囲の文字数や複雑さに関わるものではなく、発明が先行技術に対して行った実質的な貢献のみに関わるものであるという理念を明確に伝えている。真の革新者にとって、これはより高レベルの保護となり、すなわち実質の革新価値を持つ技術に審査リソースが集中されることを保証し、審査の一貫性と権威性を高めることとなる。要するに、「特徴-課題-效果」の論理的循環を明確に構築し、真に技術的課題を解決する発明こそ、強固かつ高品質な特許権保護を獲得できるのであろう。
著者プロフィール:
王勇氏は1991年に上海華東師範大学コンピュータ科学専攻を卒業し、学士号を取得した。1994年に中国科学院計算技術研究所の修士号を、2005年に中国人民大学の法学修士号を取得した。1991年~2006年まで中国特許代理(香港)有限公司に勤め、電気学部マネージャーを務めていた。2007年1月泛華偉業知識産権代理有限公司に加入した。 コンピュータハードウェア&ソフトウェア、通信技術、半導体装置及び製造技術、自動制御及び家電製品などの分野が得意である。特許出願文書の作成、審査指令の応答、再審請求、無効審判、特許行政訴訟、権利侵害訴訟、集積回路のレイアウト保護、コンピューターウェアーソフト保護などの方面に豊富な経験を持っている。

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