特許弁理士 劉 霞

 分割出願は専利出願における単一性の問題を解決する救済手続として、中国の専利制度において詳細に規定されている。分割出願制度を合理的に利用することは、イノベーターの合法的権益を十分かつ柔軟に保護し、出願人の知的財産権に対し保護を強化することができる。

 「中華人民共和国専利法(2020)」の第31条の規定によると、1件の発明又は実用新案の専利出願は一つの発明又は実用新案に限定しなければならなく、一つの総体的な発明思想に属する二つ以上の発明又は実用新案は、1件の出願として提出することができる。

 また、「中華人民共和国専利法実施細則(2010)」(以下「実施細則」という)の第42条の規定によれば、1件の専利出願に二つ以上の発明、実用新案又は意匠が含まれる場合、出願人は本細則第54条第1項に規定する期限満了前までに、国務院専利行政部門に分割出願を提出することができる。但し、専利出願が既に却下され、取り下げられ、又は取り下げとみなされた場合、分割出願を提出することができない。

 中国の審査実務において、分割出願は通常、受動的分割と自発的分割の2つの場合に分けられる。受動的分割とは、出願人が審査意見通知書に指摘された単一性の欠陥を克服するために受動的に行う分割をいう。自発的分割とは、出願人が単一性の欠陥に関する審査意見通知書を受領していない状況で自発的に行う分割をいう。

 合理的なタイミングを計り、自発的に分割を行うことは、出願人にとって利益が大きい。

 出願人は分割出願を利用して出願書類作成時の欠陥を補い、明細書のみに記載されていて請求の範囲には記載されていない発明をクレームアップすることができる。原出願の明細書において複数の発明が開示され、原出願の請求の範囲において様々な原因によりそのうちのいくつかの発明だけの保護が請求されている場合には、出願後又は審査過程において、原出願の明細書に開示されたその他の発明の内容に基づいて新たな請求の範囲を作成し、分割出願を提出することができる。

例1:原出願において異なる構成を有するディスプレイの複数の実施例が開示されているが、原出願の請求の範囲において単一性の制限により保護できるのは1つの実施例のみである。この場合、出願人は、原出願の審査終了前にディスプレイの他の実施例に基づいて分割出願を行うことができる。

例2:原出願では光学システム及びその光学システムに用いられる光学センサーが開示されているが、原出願の請求の範囲では光学システムに対する保護のみが請求されている。このとき、出願人は、原出願の審査終了前に、光学システムの光学センサに基づいて分割出願を行うことができる。

例3:原出願には材料Aを含む装置B及び材料Aを含む装置Bの製造方法が開示されているが、原出願の請求の範囲には当該装置B及び装置Bの製造方法に対する保護のみが請求されている。このとき、出願人は、原出願の審査終了前に、材料A及び材料Aの製造方法に基づいて分割出願を行うことができる。

 次に、出願人は分割出願を利用して専利の保護範囲を合理的に変更又は拡大することもできる。

例1:原出願の独立請求項に特徴A、B、Cが含まれている。原出願の審査過程において、出願人は独立請求項における特徴Bが必須の技術的特徴に属さないことに気づいた。

 『審査指南(2020)』の第二部分第八章の5.2.1.3節の規定によれば、独立請求項における技術的特徴を自発的に削除することは、その請求項の保護を求める範囲を拡大してしまう。例えば、出願人が独立請求項から自発的に技術的特徴を削除したり、関連する技術用語を自発的に削除したり、または具体的な応用範囲を限定する技術的特徴を自発的に削除したりする場合は、当該自発補正の内容が原明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えなくても、補正によって請求項の保護を求める範囲が拡大されれば、そのような補正は認められないものである。

 よって、上記例1のケースにおいて、出願人は原出願の独立請求項における特徴Bを自発的に削除することはできない。このとき、出願人は原出願の審査終了前に特徴Aと特徴Cを含む技術方案に基づいて新たな独立請求項を作成し、分割出願を提出すれば良い。

 例2:原出願の独立請求項に特徴「コイルばね」が含まれているが、原出願の明細書にコイルばねは1つの実施形態にすぎず、その他の弾性部材に置き替えることができると記載されている。

 審査の過程において、出願人は、独立請求項における特徴である「コイルばね」を「弾性部材」に修正して、より広い保護範囲を得ることを望んでいる。

 しかし、『審査指南(2020)』の上述の規定によると、このような補正は独立請求項における技術的特徴を自発的に補正することに該当し、保護請求の範囲を拡大することになる。補正の内容が原明細書及び請求の範囲に記載された範囲を超えなくても、通知書で指摘された欠陥に対して行った補正と見なされず、このような補正は保護請求の範囲を拡大したとして、認められない。

  このとき、出願人は原出願の審査終了前に特徴「弾性部材」の技術方案に基づいて独立請求項を作成し、分割出願を提出することができる。


 分割出願を準備する際、出願人は通常、以下の問題に注意しなければならない。

 1.分割出願の提出時期について

 「実施細則」の第42条第1項の規定によると、専利出願が「審査中(pending)」の状態にある限り、出願人は分割出願を提出することができる。

「審査中でない」状態とは、専利出願が既に査定されたり、拒絶されたり、取り下げられたり、又は取り下げとみなされたことをいう。具体的に、出願人は取下げとみなされる通知書を受領した日から起算して2ヶ月以内に、又は出願人が拒絶査定、又は拒絶を維持する復審決定を受領した日から起算して3ヶ月以内に分割出願を提出しなければならない。注意すべきは、出願人が拒絶査定を受領した後に復審請求を提出することにより、原出願を復審手続に移行させた場合でも、出願人は復審手続期間中に分割出願を提出することができる。また、請求人が復審決定に不服して行政訴訟を提起する場合、請求人は行政訴訟期間中にも分割出願を提出することもできる。

  また、分割出願の提出は、出願人が専利権付与通知書を受領した日から起算して2ヶ月以内でなければならない。

  既に分割出願を提出した後に、出願人が当該分割出願に対して再度分割出願を提出することを希望する場合、再度の分割出願の提出時期は、上記で検討した親出願の分割出願の提出期限を満たす必要がある。注意すべきは、審査官が分割出願に対して分割通知書又は審査意見通知書を発行し、分割出願に単一性の欠陥があることを指摘した場合、この時点で最初の親出願の分割出願の期限が既に切れていたとしても、出願人は、現在の分割出願が査定授権/拒絶/取下げとみなされる前に、当該分割出願について再度分割出願を提出することができる。


2.分割出願の類別について

 『実施細則』の第42条の規定によれば、分割出願は原出願の類別を変更してはならない。すなわち、原出願が発明である場合、分割出願も発明でなければならず、原出願が実用新案である場合は、分割出願も実用新案でなければならない。

3.分割出願の内容について

 『実施細則』の第43条の規定によれば、分割出願は原出願に記載された範囲を超えてはならない。したがって、分割出願の請求の範囲を作成する際に、請求項に限定された特徴は原出願書類に明確に記載されているか、又は原出願書類に開示された内容によって直接的に、異議なく確定できるものでなければならない。

 分割出願の請求の範囲と明細書の内容について、関連規定は『審査指南(2020)』の第二部分第6章の3.2節をそ参照いただきたい。
 原出願と分割出願の請求の範囲は、それぞれ異なる発明の保護を求めなければならないが、明細書については必ず異ならなくても良い。例えば、原出願にA、Bの2つの発明があり、分割出願の請求の範囲においてAの保護を求める場合に、その明細書は依然としてAとBであってもよいし、Aだけを保留してもよい。または、分割出願の請求の範囲においてBの保護を求める場合に、その明細書は依然としてAとBであってもよいし、Bだけの内容になっていてもよい。

 分割出願の請求の範囲を作成する際、出願人は保護を求める主題をクレームに記載しなければならない。出願人が分割出願のクレームにおいて主題Aの保護を求め、その後、審査官が指摘した新規性・進歩性の欠陥を克服するために請求項の主題をBに補正した場合、補正後の主題Bは元の保護を請求した主題と単一性を欠くものとみなされ、受け入れられない。

 例えば、自転車の新型ハンドルに関する分割出願では、明細書に新型ハンドルだけでなく、自転車の車台などの他の部品も記載されているが、出願人は分割出願の請求の範囲において新型ハンドルの保護のみを求めている。実体審査を経て、請求項に限定された新型ハンドルは進歩性を具備しないと指摘される。このような状況において、出願人が自発的な補正を行い、請求項を自転車の車台に限定した場合、審査官は補正後の主題と元の保護を求めた主題との間に単一性が欠如しているとして受け入れない。

 実務において分割出願を提出する際には、通常、明細書に対して実質的な補正を行わず、補正後の主題のみを分割出願の請求項とする。

 したがって、具体的なニーズに応じて適切なタイミングで分割出願を提出することは、専利出願戦略において重要な手段である。分割出願制度を合理的に利用することで、出願人の専利保護及び市場対応能力を強化し、専利出願の市場価値を増加させることができる。

 

 

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