楊文泉

 

いいニュースなのか、それとも悪いニュースなのかは立場によって見た方が異なることである。


深セン市大疆霊眸科技有限公司(以下、「DJI Osmo」という)とその親会社である深セン市大疆創新科技有限公司(以下、「DJI」という)にとっては、本当に悪いニュースである。当所の依頼人である桂林智神信息技術有限公司(以下、「智神」という)にとっては、もちろん喜ばしいニュースである。そのニュースとは、国家知識産権局が2017年末に出した、DJI Osmo(株)の「雲台」という名称の第201430207007.1号意匠特許(元特許権者はDJI)の全部無効というる無効審判の審決に対し、北京知識産権裁判所にて審理を行い当該審決を維持するという判決を2019年11月に下したのである。また、国家知識産権局は2020年2月にDJI Osmo(株)所有の「雲台」という第201480002121.8号発明特許(元特許権者もDJI)の全部無効を宣告した。つまり、上記2件の無効審判請求の請求人として、智神はDJI Osmoに全勝した。


上記の勝利に対して、筆者はもちろん当所の代理チームと智神のために喜んでいるが、DJI OsmoとDJIを貶したりからかうつもりはない。勝敗は兵家の常であり、DJIが無人機分野のイノベーション企業のトップであるに変わりはない。


しかし、筆者は上記2件の特許が無効と宣告されたことやその裏にある事実に感銘を受けたことがある。DJI OsmoとDJIに同情すると同時に、同じような残念なことがないように、他の企業、特に企業の管理者に注意を喚起したいと思う所存である。


国家知識産権局がDJI Osmoの「雲台」という第201430207007.1号意匠特許に係る無効審判請求に対し出された決定において、その根拠となる最も重要な証拠は、当所が智神を代理して提出した証拠2と証拠3である。上記証拠に基づいて、下記の決定が出された。


●証拠2から分かるように、係争特許の元特許権者であるDJIの公式サイト「大疆創新」のニュース欄に、該ウェブサイトが発表した42ページに及ぶニュースウェブページが載せられている。各ニュースウェブページにはそれぞれニュースが記載され、各ニュースには対応の日付が表示されており、最新日付が2017年3月2日となる。その中の一つのニュースの題名は「DJIRonin-7月正式出荷」であり、「2014-06-25」と日付けられている。このタイトルが「DJIRonin-7月正式出荷」というニュースウェブページには、「Roninハンディ雲台基本特性紹介」、「Roninハンディ雲台広告シリーズのブレーンストーミング」、「Roninハンディ雲台CMの撮影裏のNGシーン特集」の3つの再生可能な動画リンクが載せられている。


●証拠2と証拠3におけるビデオは相互に裏付けられるものであり、ビデオの公開時間が係争特許の出願日前であることを証明できるので、上記証拠に示されている意匠が係争特許の既存の設計として認められ、係争特許が特許法第23条第2項の規定に適合するか否かの評価に用いられる。


●係争特許と対比設計(すなわち、前の段落に言及した「既存の設計」)の共通点と相違点から見て、両者は全体像がほぼ同じであり、主な相違点が全体の設計に占める割合がかなり小さくて、意匠の全体的視覚効果に大きな影響を及ぼすというほどではない。したがって、係争特許と対比設計は明確な区別がなく、特許法第23条第2項の規定に適合しない。


次は、国家知識産権局がDJI Osmo所有の “雲台”という第201480002121.8号の発明特許に対し出した無効決定について説明する。この案件において、当所の代理人は請求人の智神を代理して全部で14件の証拠を提出したが、その中で最も重要な証拠は依然として上記意匠特許の無効審判請求で提出した証拠2と証拠3である(決定書における添付資料2と添付資料3)。該無効審判請求の決定において、合議組が無効を認定する際のポイントは以下の通りである。


●添付2資料から分かるように、本特許の元特許権者は2014年6月25日にその公式サイト「大疆創新」に「DJIRonin -7月正式出荷」というタイトルのニュースを発表した。このニュースは主に映画撮影者向けに開発された三軸ハンディDJIRonin雲台システムの主な特性、操作モード、ハードウェアサポートなどを報道し、ハンデ雲台に関する「Roninハンディ雲台基本特性紹介」、「Roninハンディ雲台広告シリーズのブレーンストーミング」、「Roninハンディ雲台CMの撮影裏のNGシーン特集」という3つのリンクを、このウェブページに載せた。添付資料3は本特許の元特許権者がYoukuネットで「DJI大疆創新」名義で発表した「DJIRoninの基本特性紹介」というビデオである。上記の文字情報やビデオニュースは同じイベントについて同じ日に異なるメディアやプラットフォームで発表されたものである。


●上記添付資料2,3は相互に裏つけられるものであり、「本特許の元特許権者は2014年6月25日にニュース記事(添付資料2)とビデオ(添付資料3)といったメディアを通じてDJIRoninハンディ雲台という新製品について先行的に紹介や宣伝を行い、自社の新品を社会に公開して、取引先或いは潜在顧客に自社の製品を注目させて、その後の新製品の出荷と正式な販売のために伏線を張っておき、その後出荷と販売を始めた」ことを証明できる。


●添付資料4からから分かるように、半袋クッキーというハンドルネームの発信者がデジタルテイルネットワークというウェブサイトwww.dgtle.comに「信頼できる安定器- DJ I Roninハンディ雲台の素顔」という文章を発表した。該タイトルの左上に時間情報「2014-08-07」が示され、文章には異なる角度からDJ I Roninハンディ雲台を撮影した写真が表示され、後ろに完全にアップロードし切れていないコメントが付いていた。

 

●上記添付資料2、添付資料3、添付資料4と添付資料9(添付資料4は公証された「安定器-DJ I Roninハンディ雲台の素顔」という文章の複写本である)はすでに完全な証拠チェーンを構成しており、型番DJ I Roninのハンディ雲台の公開日は遅くとも2014年8月6日以前であり、本特許の出願日2014年8月13日より前であり、すなわち本特許の出願日前にはすでに公衆に知られる状態にあったということを証明できる。


●上記添付資料はすでに完全な証拠チェーンを構成しており、DJI Roninのハンディ雲台に示された技術内容は本特許の既存技術となり、本特許の新規性と進歩性を評価するために用いることができる。


上記の国家知識産権局の二つの合議組がそれぞれの審決で認めたことから分かるように、DJI Osmoの2件の特許が無効と宣告されたのは完全に元の特許権者であるDJI自身の過ちにより招いた結果である。すなわち、DJIが二つの特許出願をする前に、その内部チームはすでに二つの特許に含まれる設計案と技術案に係る製品を宣伝、販売していた。これらの先行の宣伝と販売が自分の特許を否定してしまったのである。


周知のように、一つの発明創造が特許となるには、まずはその出願時に新しいものでなければならない。即ち、既存の技術又は設計に属さず、いかなる単位又は個人も同じ発明・実用新案・意匠について、出願日前に国務院特許行政部門に出願されておらず、かつ出願日以降に公開される特許出願書類又は公告に記載されていないことが求められる。


そのため、企業はその発明創造を生産、宣伝、販売などの商業使用に投入する際に、慎重に対応し、内部の運営プロセスを協調よく管理し、その発明創造が特許出願(または商業秘密として保護)及びFTO分析→内部生産→市場宣伝→市場販売というルートに従って進むように、確保しなければならない。こうすることによって、適宜な保護を得る前に自身の不注意やミスにより発明創造の技術内容が公開され、本文の二つの特許のように無効と宣告される残念なことを避けるべきである。


この二つの案件は他の企業にとっても参考価値がある。自社の生産経営の中で競争相手の動向を密接に把握し、己を知り彼を知り、法律を武器にして激しい市場競争の中で攻撃と防御を展開してこそ、競争の中でリスクと挑戦に余裕を持って対応し自社の発展を図ることができる。

 

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