中華人民共和国知的財産権海関保護条例
 
(2003年12月2日中華人民共和国国務院令第395号公布)
 
第一章 総則
 
第一条 海関による知的財産権の保護を実施し、対外経済貿易及び科学技術・文化の交流を促進し、公共の利益を維持することを目的として、「中華人民共和国海関法」に従い、本条例を制定する。
 
第二条 本条例にいう海関による知的財産権の保護とは、海関が輸出入の貨物に関して中華人民共和国の法律、行政法規によって保護された商標権、著作権及び著作権に関わる権利、専利権(以下、知的財産権と総称する)に対して実施する保護をいう。
 
第三条 国家は知的財産権を侵害した貨物の輸出入を禁じる。
海関は関連する法律及び本条例の規定に基づき、知的財産権の保護を実施し、「中華人民共和国海関法」に規定された関連の権力を行使する。
 
第四条 知的財産権の権利者は海関に知的財産権の保護の実施を請求する場合には、海関に保護措置を採る旨の申請をしなければならない。
 
第五条 輸入貨物の荷受人又はその代理人、輸出貨物の荷送人又はその代理人は国家の規定に基づき、輸出入貨物に関する知的財産権の状況事実を海関に報告し、且つその関連証明書類を提出しなければならない。
 
第六条 海関は知的財産権の保護を実施するときには、関係当事者の営業秘密を保護しなければならない。
 
第二章 知的財産権の登録
 
第七条 知的財産権の権利者は本条例の規定に基づき、その知的財産権の登録を海関総署に申請することができる。登録を申請する場合には、申請書を提出しなければならない。申請書には以下に掲げる内容を含まなければならない。
(1)知的財産権の権利者の名称又は氏名、登録地又は国籍等
(2)知的財産権の名称、内容及び関連情報
(3)知的財産権の使用許諾の状況
(4)知的財産権の権利者が知的財産権を合法的に行使する貨物の名称、生産地、出入境地の海関、輸出入業者、主な特徴、価格等
(5)既知の知的財産権侵害貨物の製造業者、輸出入業者、出入境地の海関、主な特徴、価格等
前項に規定した申請書の内容に証明書類がある場合には、知的財産権の権利者は証明書類を添付し送付しなければならない。
 
第八条 海関総署は全ての申請書類を受領した日より30労働日以内に登録するか否かを決定し、且つ書面により申請者に通知する。登録しない場合には、その理由を説明しなければならない。
以下に掲げる状況の一がある場合には、海関総署はこれを登録しない。
(1)申請書類が完全でないか又は無効である場合
(2)申請人が知的財産権の権利者でない場合
(3)知的財産権が法律、行政法規による保護を受けられない場合
 
第九条 海関総署は、知的財産権の権利者が知的財産権登録申請においてその関連状況又は文書をありのままに提出していないことを発見した場合には、その登録を取消すことができる。
 
第十条 知的財産権海関保護登録は海関総署が登録を認可した日より効力を生じ、有効期間は10年とする。
知的財産権が有効であるときは、知的財産権の権利者は知的財産権海関保護登録の有効期間の満了日前6ヶ月内に、海関総署に更新登録を申請することができる。毎次の更新登録の有効期間は10年とする。
知的財産権海関保護登録の有効期間が満了しても更新を申請しなかった場合、又は知的財産権が法律、行政法規の保護を受けなくなった場合には、知的財産権海関保護登録は直ちに失効する。
 
第十一条 登録された知的財産権に変更が生じた場合には、知的財産権の権利者は変更が生じた日より30労働日以内に、海関総署に登録の変更又は取消の手続をしなければならない。
 
第三章 権利侵害疑義貨物の差押え申請及びその処理
 
第十二条 知的財産権の権利者は、権利侵害の疑義がある貨物が輸出入されようとしていることを発見した場合には、貨物の出入境地の海関に権利侵害疑義貨物の差押えを申請することができる。
 
第十三条 知的財産権の権利者は、海関の権利侵害疑義貨物の差押えを申請する場合には、申請書及び関連証明文書を提出し、且つ権利侵害の事実があることを証明できる十分な証拠を提出しなければならない。
申請書には以下に掲げる主な内容を含めなければならない。
(1)知的財産権の権利者の名称又は氏名、登録地又は国籍等
(2)知的財産権の名称、内容及びその関連情報
(3)権利侵害疑義貨物の荷受人及び荷送人の名称
(4)権利侵害疑義貨物の名称、規格等
(5)権利侵害疑義貨物の出入されうる貿易港、時間、運輸手段等
権利侵害疑義貨物が、登録された知的財産権を侵害する疑いがある場合には、申請書に海関登録番号を記載しなければならない。
 
第十四条 知的財産権の権利者は、海関による権利侵害疑義貨物の差押えを請求する場合には、海関に貨物の価値を上回らない担保金を提供しなければならず、それをもって不当申請により与えた荷受人、荷送人の損失、及び海関差押え後の貨物の倉庫貯蔵、保管、及び処理の費用を支払う。知的財産権の権利者が貯蔵、保管費用を直接に倉庫業者に支払う場合には、担保金より控除する。具体的な方法は別途海関総署が制定する。
 
第十五条 知的財産権の権利者は、権利侵害疑義貨物の差押えを申請する場合、本条例第十三条の規定を満たし、且つ本条例第十四条の規定に基づき担保を提供した場合には、海関は権利侵害疑義貨物を差押え、書面により知的財産権の権利者に通知し、且つ海関の差押え証書を荷受人又は荷送人に送達しなければならない。
知的財産権の権利者は権利侵害疑義貨物の差押えを申請し、本条例第十三条の規定を満たさない、又は本条例第十四条の規定に基づく担保金を提供しない場合には、海関は申請を却下し、且つ書面で知的財産権の権利者に通知しなければならない。
 
第十六条 海関は、輸出入貨物に登録された知的財産権を侵害する疑いがあることを発見した場合には、書面により知的財産権の権利者に通知しなければならない。知的財産権の権利者は送達の日より3労働日以内に本条例の第十三条の規定に基づき申請を提出し、且つ本条例第十四条の規定に基づき担保金を提供した場合には、海関は権利侵害疑義貨物を差押え、書面により知的財産権の権利者に通知し、且つ海関の差押え証書を荷受人又は荷送人に送付しなければならない。知的財産権の権利者が期間を越えても申請せず又は担保金を提供しない場合、海関は貨物を差押えてはならない。
 
第十七条 知的財産権の権利者及び荷受人又は荷送人は、海関の同意を経た後であれば関連貨物を調べることができる。
 
第十八条 荷受人又は荷送人は、その貨物が権利者の知的財産権を侵害しないと主張する場合には、海関に対して書面により説明し且つ関連証拠を添付しなければならない。
 
第十九条 専利権侵害疑義貨物の荷受人又は荷送人は、その輸出入貨物が専利権を侵害しないと主張する場合には、海関に貨物と同等価値の担保金を提出した後、海関にその貨物の通過を請求することができる。知的財産権の権利者が合理的期間内に人民法院に起訴しない場合には、海関は担保金を返済しなければならない。
 
第二十条 海関は、輸出入貨物が登録された知的財産権を侵害する疑いがあることを発見し且つ知的財産権の権利者に通知した後、知的財産権の権利者が海関に権利侵害疑義貨物の差押えを請求する場合には、海関は差押えた日から30労働日以内に、差押えられた権利侵害疑義貨物について知的財産権侵害の有無について調査し認定しなければならない。認定できない場合には、書面により直ちに知的財産権の権利者に通知しなければならない。
 
第二十一条 海関は差押えられた権利侵害疑義貨物の調査に知的財産権主管部門の協力を請求する場合、関連する知的財産権主管部門はこれに協力しなければならない。
知的財産権主管部門は、輸出入貨物に係る権利侵害事件の処理に海関の協力を請求する場合、海関はこれに協力しなければならない。
 
第二十二条 海関が差押えられた権利侵害疑義貨物及びその状況を調査する場合、知的財産権の権利者及び荷受人又は荷送人はこれに協力しなければならない。
 
第二十三条 知的財産権の権利者は、海関に保護措置を採るよう申請した後、「中華人民共和国商標法」、「中華人民共和国著作権法」又は「中華人民共和国専利法」の規定に基づき、起訴前に差押えられた権利侵害疑義貨物について人民法院に権利侵害行為の停止又は財産保全措置を採るよう請求することができる。
海関は、人民法院による権利侵害行為の停止又は財産保全の執行協力通知を受けた場合、これに協力しなければならない。
 
第二十四条 以下に掲げる状況の一がある場合、海関は差押えられた権利侵害疑義貨物を通過させなければならない。
(1)海関が本条例第十五条の規定に基づき権利侵害疑義貨物を差押えた場合であって、差押えた日より20労働日以内に人民法院から執行協力通知を受け取らなかった場合。
(2)海関が本条例第十六条の規定に基づき権利侵害疑義貨物を差押えた場合であって、差押えた日より50労働日以内に人民法院から執行協力通知を受け取っておらず、且つ調査を経ても差押えた権利侵害疑義貨物が知的財産権を侵害していると認定できない場合。
(3)専利権侵害疑義貨物の荷受人又は荷送人が、海関に貨物と等価の担保金を提供し、海関にその貨物の通過を請求した場合。
(4)荷受人又は荷送人が、その貨物が権利者の知的財産権を侵害していないことを立証するに十分な証拠を持っていると海関が認めた場合。
 
第二十五条 海関が本条例の規定に基づき権利侵害疑義貨物を差押えた場合には、知的財産権の権利者は関連する倉庫貯蔵、保管及び処理の費用を支払わなければならない。知的財産権の権利者が関連費用を支払わない場合、海関はその海関に提供された担保金から控除し、又は担保人に関連する担保責任を負わせることができる。
権利侵害疑義貨物が知的財産権を侵害していると認められた場合には、知的財産権の権利者はその支払った関連する倉庫貯蔵、保管及び処理等の費用を権利侵害行為の差止めに支払う合理的支出に算入することができる。
 
第二十六条 海関は、知的財産権保護の実施において犯罪事件に係わる恐れがあることを発見した場合、これを法により公安機関に移送し処理しなければならない。
 
第四章 法律責任
 
第二十七条 差押えられた権利侵害疑義貨物が、海関の調査を経たのち知的財産権を侵害していると認められた場合には、海関はこれを没収する。
海関は知的財産権侵害貨物を没収した後、知的財産権侵害貨物の関連状況を書面により知的財産権の権利者に通知しなければならない。
没収された知的財産権侵害貨物が社会公益事業に用いることができる場合には、海関はこれを公益機構に交付し社会公益事業に用いなければならない。知的財産権の権利者に購入意欲がある場合には、海関は有償で知的財産権の権利者に譲渡することができる。没収された知的財産権侵害貨物を社会公益事業に用いる方法がなく且つ知的財産権の権利者に購意思が無い場合には、海関は権利侵害の特徴を削除したのち法により競売に付すことができる。権利侵害の特徴を削除する方法が無い場合には、海関はそれを廃棄しなければならない。
 
第二十八条 個人が国境を越えて物品を携帯又は郵送する場合、個人で使用する合理的数量を超え、且つ本条例第二条に規定した知的財産権を侵害する場合には、海関はこれを没収する。
 
第二十九条 海関が知的財産権保護の登録及び知的財産権の保護措置の申請を受理した後、知的財産権の権利者が確実な情況を提供しないことにより権利侵害貨物を発見できず、速やかに保護措置を取ることができない又は保護措置が十分でない場合、知的財産権の権利者は自ら責任を負わなければならない。
知的財産権の権利者が海関に権利侵害疑義貨物の差押えを請求した後、海関が差押えた権利侵害疑義貨物が知的財産権の権利者の知的財産権を侵害していると認定できない、又は人民法院が知的財産権の権利者の知的財産権を侵害していないと判定した場合には、知的財産権の権利者は法により賠償責任を負わなければならない。
 
第三十条 知的財産権侵害貨物を輸入又は輸出したことにより、犯罪を構成した場合には、法により刑事責任を追及する。
 
第三十一条 海関の職員が知的財産権の保護を実施する場合、職務を怠慢し、職権を濫用し、私利のため不正を働き、犯罪を構成する場合には、法により刑事責任を追及する。犯罪を構成しない場合には、法により行政処分を行う。
 
第五章 附則
 
第三十二条 知的財産権の権利者は、その知的財産権を海関総署に登録する場合、国家の関連規定に基づき登録費用を支払わなければならない。
 
第三十三条 本条例は2004年3月1日より施行する。1995年7月5日に国務院が発布した「中華人民共和国知的財産権海関保護条例」は同時に廃止する。 
 

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