リリースタイム:2024-01-16 来源:泛華偉業知識産権 王珍珍

   2023年12月11日に国務院が下した「中華人民共和国専利法施行細則の改正決定について」に従い、国家知識産権局は2023年12月21日に「改正された専利法及びその施行細則の施行に伴う審査業務の取扱いに関する経過措置について」を公布した。改正された施行細則の適用範囲を説明するとともに、同日、改正された「専利審査指南」を公布した。改正後の施行細則及び審査指南は、2024年1月20日から施行される。今回の改正は主に以下の内容に関する。

 

.電子出願公式通知への応答期限について、15日間の推定郵送期間が廃止され

 

条項:特許庁の電子提出システムを利用して提出された専利出願について、特許庁が各種の書類を電子送達した場合、この電子システムに登録された日(公式通知に記載された発行日と同等)を交付日とする。書面で提出された専利出願の場合、特許庁は、郵送、直接交付等により、各種の書類を交付するが、交付日は依然として文書の発行日から満15日と推定される。

 

解釈:現在、特許庁が受け付けている専利出願のほぼ99%は、電子システムを通じて提出されている。新たな施行細則の施行後、特許庁が電子出願に対して発行する公式通知の返答期限を計算する際、追加されていた15日間の猶予期間はなくなる。例えば、電子出願で発行日が2024年1月20日の公式通知を受領し、通知に指定された返答期限が通知の受領日から2ヶ月又は4ヶ月である場合、この通知の返答期限は2024年3月20日又は2024年5月20日となる。

 

適用範囲:2024年1月20日以降、特許庁が電子出願に関して発行する公式通知に適用される。

 

 

.信義則違反が拒絶、無効請求の理由となり

 

条項:施行細則に新たな第11条が追加され、「専利出願は信義則に従うべき、各種の専利出願は、真正な発明・創作活動に基づくべき、不正行為は許されない」ことが要求される。この第11条に違反すると、特許庁が発明/実用新案/意匠出願の拒絶査定をしたり、他の者が発明/実用新案/意匠の無効を請求したりする理由になる。県レベル以上の市場監督管理部門は警告を発し、10万元以下の罰金の行政罰を科す可能性がある。

 

解釈:この規定は、主に非正常専利出願行為、即ち、真正な発明・創作活動に基づくものではなく、業績捏造や補助金詐欺等を目的とし、意図的に専利出願を捏造し、専利出願を繰り返して提出する行為等を対象とする。特許庁は2021年3月に「専利出願行為の規制措置について」を公布し、このような非正常専利出願行為を詳細に定義し、具体的な処理手続きを規定したが、この措置では、このような行為に対する罰則は、関連する専利出願を自主的に取り下げて専利料金を追払するように加害者に要求すること、及び特許庁が関連する専利出願を棄却することであった。特許庁はまた2021年6月1日に施行された新たな専利法に信義則を追加したが、罰則を詳細に規定しなかった。今回改正された施行細則では、このような行為に対する罰則がより厳しく規定されていることがわかる。

 

適用範囲:2024年1月20日以降、初歩審査、実体審査及び復審手続きにおける専利出願の場合、特許庁は上記条項を適用して審査を行う。2024年1月20日以降、公衆は施行細則第11条を適用しないことを理由として、権利付与されて公告された専利に対し無効請求を提出することができる。

 

 

.復審合議体は、職権により復審請求以外の内容を審査可能

 

条項:特許庁は復審を行う際、復審請求が規定に適合していないか、又は専利出願に他の明らかな欠陥があると考える場合、専利出願人に通知すべきである。出願人が意見を述べたり、出願書類を補正したりしても、依然として規定に適合しない場合、特許庁は復審請求を棄却する復審決定を下すべきである。

 

解釈:今回の施行細則及び審査指南が改正される前、復審手続きを担当する合議体は通常、実際には、実体審査官が下した拒絶査定と出願人が提出した復審請求に関する内容のみを審査し、専利出願における他の欠陥を審査していなかった。改正された施行細則及び審査指南では、復審合議体が職権により専利出願における他の明らかな欠陥を審査する状況が詳細に規定されている。例えば、拒絶査定で指摘された欠陥に加え、復審合議体は、専利出願における信義則に違反する欠陥を更に指摘することができる。拒絶査定において請求項の保護範囲が不明確であると指摘された場合に、合議体は更に関連する明細書が不明確であると指摘することができる。請求項に進歩性がないと拒絶査定で指摘された場合、合議体は請求項の保護範囲の不明確のせいで、進歩性の審査に影響を与えるという欠陥を更に指摘することができる。拒絶査定においてリストされた引用文献等の証拠を基に、合議体は証拠の使用方法を調整し、最も近い従来技術を変更したり、その内のある証拠を省略したりすることができる。

 

   なお、出願人が出願書類を自主的に改正することができる期限は、最も遅くても実体審査通知の受領日から3ヶ月以内である。即ち、復審請求を提出するか、又は復審通知に返答する場合、依然としてそれぞれ拒絶査定又は復審通知に関する欠陥に対してのみ改正することができる。

 

適用範囲:2023年12月21日に公布された経過措置では、上記条項の発効時期が特に規定されていなかったため、原則として、これらの条項は出願日が2024年1月20日以降の専利出願に適用される。しかし、改正前の審査指南には、「復審合議体が拒絶査定に記載されていない明らかな実質的欠陥を指摘することを奨励する」という一般的な記述も含まれていたため、今回の改正後、たとえ出願日が2024年1月20日前であっても、復審手続きにおいて合議体によって他の明らかな欠陥を指摘されるリスクに直面する可能性もある。

 

 

.国際機関が開催する学術会議又は技術会議で初めて発表したコンテンツは、新規性を喪失しない猶予を請求可能

 

条項:専利法では、出願日前の6ヶ月以内に新規性を喪失しない状況が規定され、それは、「中国政府が主催又は承認した国際展示会で初めて出展する」状況及び「規定された学術会議又は技術会議で初めて発表する」状況を含む。今回の施行細則の改正により、上記「学術会議又は技術会議」の定義が拡大され、元の「国務院の関係管轄当局又は全国学術団体が主催する学術会議又は技術会議」を基に、「国務院の関係管轄当局が承認した国際機関が開催する学術会議又は技術会議」も追加した。同時に、出願人が提出する必要がある上記「国際展示会で初めて出展する」状況、「学術会議又は技術会議で初めて出展する」状況の証明書類について、この国際展示会又は学術会議、技術会議の主催団体からのものである必要がなくなった。

 

解釈:今回の改正により、新規性を喪失しない猶予期間の状況と証明書類の要求が両方とも緩和された。

 

適用範囲:2023年12月21日に公布された経過措置では、上記条項の発効時期が明らかに規定されていなかったため、原則として、これらの条項は出願日が2024年1月20日以降の専利出願に適用される。

 

 

.出願人は、優先権主張期限後の2ヶ月以内に優先権回復を請求可能

 

条項:出願人が優先日から12ヶ月を超えて中国の発明又は実用新案出願を提出した場合、優先日から14ヶ月以内に優先権回復を請求することができる。中国国内段階に移行するPCT国際出願の場合、国際出願日が優先日から12ヶ月を超え且つ14ヶ月を超えず、そして国際段階で優先権回復が承認されている場合、中国特許庁に優先権回復請求が提出されているとみなされ、国際段階で出願人が優先権回復を請求していないか、又は優先権回復を請求したが承認されなく、出願人に正当な理由がある場合、中国国内段階に移行した日から2ヶ月以内に、中国特許庁に優先権回復を請求することができる。

 

解釈:新たに改正された審査指南によれば、出願人はまた特許庁が「公開準備が整う前に」優先権回復請求を提出すべきである。つまり、早期公開が要求された中国の発明出願、又は最も早い優先日から18ヶ月を超えた中国国内段階に移行するPCT国際出願の発明出願の場合は、初歩審査合格通知書を受領する前に優先権回復請求を提出すべきである。中国の実用新案出願の場合、登録料を支払う前に優先権回復請求を提出すべきである。中国国内段階に移行するPCT国際出願の発明出願は、移行日から約1ヶ月程度に、初歩審査合格通知書を受領する可能性が高いことを考えると、出願人が当該出願の優先権回復請求を提出する必要があると考える場合は、できるだけ早く提出すべきである。

 

適用範囲:通常の中国の発明/実用新案出願の場合、2024年1月20日以降、出願人は優先日から14ヶ月以内に優先権回復請求の手続きをすることができる。例えば、出願日2024年1月20日に出願された発明又は実用新案出願について、出願人は、出願日が2022年11月20日から2023年1月20日までの先行出願の優先権回復を請求することができる。また、先行出願日から14ヶ月以内且つ公開の準備が整う前に、回復請求を提出し、回復手数料と優先権主張の料金を支払い、先行出願書類の副本(先行出願の出願人と中国出願の出願人が一致していない場合は、優先権譲渡証明書等の書類も提出する必要がある)を提出する手続きを完了すべきである。

 

   中国国内段階に移行するPCT国際出願の場合、2024年1月20日前に中国特許庁は公開の準備が整っておらず、かつ国際段階で優先権回復が承認されていれば(特に中国特許庁が国際段階で送信されるPCT159表を受領した場合)、原則として、既に中国特許庁に優先権回復請求を提出したとみなされる。国際段階で優先権回復が承認されず、移行日が2023年11月20日以降の場合、出願人は2024年1月20日以降に、移行日から2ヶ月以内に優先権回復請求の手続きをすることができる。

 

 

.出願人は、優先日から16ヶ月以内に優先権を追加又は補正可能

 

条項:出願人が中国の発明又は実用新案出願を提出する際に優先権を主張する場合、優先日から16ヶ月以内又は出願日から4ヶ月以内、特許庁が公開の準備を整う前に(つまり、実用新案出願の登録料を支払う前に、早期公開が要求された発明出願の初歩審査合格通知書を受領する前に)、優先権主張の追加又は補正を請求することができる。

 

解釈:優先権主張の追加又は補改正を請求する場合、上記時限要求に加え、もう一つの前提は「出願を提出する際に優先権を主張したこと」、つまり、専利出願を提出する際の請求書に少なくとも1つの正しい優先権が明らかに記載された場合のみ、他の優先権の追加又は補正を請求することができる。また、「優先日から16ヶ月」という期限は、この請求書に既に正確で明らかに記載され、改正する必要がなく、最も早い優先日から計算されるものである。

 

   この条項は基本的に通常の中国の発明/実用新案出願にのみ適用され、中国国内段階に移行するPCT国際出願の場合、国際段階で優先権の追加又は補改正が完了していない場合、中国国内段階に移行して新たな優先権を追加することは承認されない。優先権の補正が承認される範囲も、「国際段階での優先権主張書において一定事項に誤記(先行出願の出願日、出願番号、受理機関の三つの内に多くても二つが間違っていることを指す)があった場合、移行日から2ヶ月以内に補正請求を提出することができる」に厳しく限定される。

 

   なお、優先権回復と追加/補正は、同時に適用することはできず、出願人が請求する優先権追加主張は、先行出願日が専利出願日より12ヶ月以上早い先行出願であってはならず、且ついずれかの優先権主張を先行出願日が専利出願日より12ヶ月以上早い先行出願に補正することはできない。

 

適用範囲:2024年1月20日から、通常の中国の発明/実用新案出願について、出願人は優先日から16ヶ月以内に優先権の追加又は補正の手続きをすることができる。

 

 

.出願人は、出願日から2ヶ月以内、先行出願書類を援用して出願書類を追加可能

 

条項:発明又は実用新案出願に権利要求書(特許請求の範囲)、明細書等の出願書類が欠落しているか、又は誤って提出されたが、出願人が出願を提出する際に優先権を主張した場合、出願日から2ヶ月以内又は特許庁が発行する関連補足通知に規定された期限内に、先行出願書類を援用して出願書類を追加し出願日を保持することができる。

 

解釈:援用・付加の手続きをすることは、上記期限要件に加え、もう一つの前提は「出願の提出時に優先権を主張したこと」であり、つまり、関連する優先権が出願提出の請求書に正確に記載される限り、この優先権に基づいて援用・付加を行うことができる。援用・付加と優先権回復/追加/補正を同時に適用することはできず、出願人が回復/追加/補正を請求した優先権は援用・付加の基礎とすることができない。分割出願も援用・付加を行うことができない。

 

   外国優先権に基づいて援用・付加の手続きをする場合、先行出願書類の副本の中国語訳文の提出が必要となる。援用・付加の手続きにより出願書類を追加することで明細書追加料金が増加する場合、出願日から2ヶ月以内、又は特許庁が追払料金通知書を発行した日から1ヶ月以内に関連する料金を追払する必要がある。

 

   中国国内段階に移行するPCT国際出願の場合、国際段階で援用・付加を行い、且つ出願人が中国国内段階での出願に援用・付加の内容を保持したい場合、中国国内段階での出願提出の際又は審査官が補正通知を発行した日から2ヶ月以内に、先行出願書類の副本の中国語訳文を提出し、且つ移行の声明に先行出願書類の副本の訳文における援用・付加が行われた内容の位置を指摘すべきである。

 

適用範囲:出願日が2024年1月20日以降の中国の発明/実用新案出願について、出願書類に欠陥があって援用・付加を行う必要があると出願人が見出した場合、出願日から2ヶ月以内に自主的に援用・付加の手続きを行うべきである。援用・付加の内容を含むPCT国際出願については、その中国国内段階移行日が2024年1月20日以降の場合、出願人は、中国国内段階での出願提出の際に、審査指南に基づいて、自主的に援用・付加の手続きを行うべきである。出願書類に欠陥があって援用・付加を行う必要があると審査官が見出した場合、出願人は、審査官が補正通知を発行した日から2ヶ月以内に援用・付加の手続きを行うことができる。

 

.部分意匠出願の審査要件を詳細に規定

 

条項:部分意匠を出願する場合、製品の全体図を提出し、且つ点線と実線の組み合わせ又は他の方式(例えば、単色の半透明層で保護する必要のない部分を覆う)で保護する必要がある部分の内容を表示すべきである。保護を主張する部分と他の部分との間に明らかな境界線がない場合、その境界線は点線で表示すべきである。部分意匠を出願する場合、製品の全体図に点線と実線の組み合わせで表示されている場合を除き、概要説明書に、保護を主張する部分を記載すべきである。

 

解釈:2020年に改正された専利法に従い、出願人は2021年6月1日から特許庁に部分意匠出願を提出することができるようになった。特許庁が当時公告した「改正された専利法の施行に伴う審査業務の取扱いに関する経過措置について」に従い、2021年6月1日以降に提出された部分意匠出願の場合、特許庁が新たに改正された専利法施行細則の施行後に審査する。当事務所の経験によれば、以前提出された部分意匠出願については、2023年から審査意見をいくつか受領しており、今回の新たな施行細則及び審査指南の公布により、部分意匠出願に対する特許庁の審査要件が明らかになった。

 

適用範囲:特許庁は、2024年1月20日から、上記条項に従い、出願日が2021年6月1日以降の部分意匠出願を審査する。

 

 

.意匠の国際出願の審査要件を詳細に規定

 

条項:「工業製品の意匠国際登録に関するハーグ協定(1999年改正協定)」に従って国際登録日を決定し、且つ中国を指定した意匠の国際出願は、中国特許庁に意匠出願を提出したものとみなされ、その国際登録日を出願日とする。特許庁は、中国を指定した意匠の国際出願を審査し、審査結果を国際事務局に通知する。審査の結果、保護が決定された場合には、その旨を公告し、この意匠専利権はその公告日から中国で発効し、審査の結果、拒絶理由を見出した場合には、拒絶理由通知書を発行し、出願人に4ヶ月以内に返答するように要求する。返答書類において通知書で指摘された欠陥を克服できない場合、特許庁は拒絶査定を下す。

 

解釈:ハーグ協定が2022年5月5日から中国で発効して以来、出願人は中国を指定した意匠の国際出願を提出することができるようになった。2023年1月11日から、特許庁は公布された関連経過措置に従い、国際登録日が決定され、且つ中国を指定した意匠の国際出願の審査を開始する。今回の施行細則及び審査指南の改正により、意匠の国際出願の審査要件及び手続きがより詳細に規定され、以前の経過措置は2024年1月20日から廃止されることになる。

 

   なお、中国を指定して優先権を主張した意匠の国際出願の場合、先行出願書類の副本の提出期限は、国際公開日から3ヶ月以内である。出願人が自主的に分割出願を提出した場合、分割出願の提出期限は、親出願の国際公開日から2ヶ月以内である。審査官の意見に従って分割出願を提出する場合には、分割出願の提出期限は、親出願が中国で権利付与されて公告された日(親出願が拒絶査定されたか、又は既に取り下げられた場合には分割出願を提出できない)から2ヶ月以内である。これらの時限はいずれも延期することはできず、一度見過ごしたら、回復を要求することはできない。

 

適用範囲:2024年1月20日から、特許庁は、新たな施行細則及び審査指南の要件に従い、出願日が2022年5月5日以降の意匠の国際出願を審査する。

 

 

.出願人による遅延審査請求の取り下げを認めるように

 

条項:出願人は、発明出願に対して実体審査請求を提出する同時に、1年間、2年間又は3年間の遅延審査請求を提出することができる。実用新案出願を提出する場合には、1年間の遅延審査請求を提出することができ、意匠出願を提出する場合には、月単位(最大遅延期間は36ヶ月)の遅延審査請求を提出することができる。遅延期間が満了する前に、出願人は遅延審査請求の取り下げを請求することができ、その請求が承認された後、専利出願は順番に審査を待つ。

 

解釈:特許庁が2019年に審査指南を改正した際、出願人が発明出願と意匠出願に対して遅延審査請求を提出することができると規定したが、実用新案出願に対しては遅延審査請求の提出が承認されておらず、出願人が遅延審査請求の取り下げができるかどうかも規定されていなかった。実際には、一旦遅延審査請求が提出されると、出願人による取り下げ手続きは存在しなかった。今回の審査指南の改正では、出願人が遅延審査請求を取り下げることができることが明らかに規定され、出願人にとっては利便性が高いものとなっている。

 

適用範囲:2023年12月21日に公布された経過措置では、上記条項の発効時期は特に規定されていなかったが、原則として、これらの条項は出願日が2024年1月20日以降の専利出願に適用される。しかし、改正前の審査指南では、出願人が遅延審査請求を取り下げることが明らかに禁止されていなかったため、今回改正後、出願日が2024年1月20日前の出願であっても、遅延審査請求の取り下げが認められる可能性がある。

 

十一.専利権存続期間補償の審査要件を詳細に規定

 

条項:出願日から4年間が満了し、且つ実体審査通知の発行日から3年間が満了してから付与された発明専利の場合、専利権者は、権利付与公告日から3ヶ月以内に専利権存続期間補償を請求することができる。補償可能な日数は、権利付与公告日から「出願日から4年間が満了しし、且つ実体審査通知の発行日から3年間が満了した日」を差し引き、また中止、保全、訴訟、復審(出願書類を補正した場合)等の特別な手続きが占める日数を差し引き、そして出願人による不当な遅延の日数を差し引いた日数となる。

 

   中国での販売が承認された新薬の場合、専利権者は、この新薬が中国で販売承認を得た日から3ヶ月以内に、それに関連する一つの専利(製品、調製方法、又は医療用途の専利であってもよい)に対して専利権存続期間補償を請求することができる。補償期間は、この専利出願日から新薬の販売承認日までの日数から5年間を差し引いた日数に基づいて計算されるが、最終的な補償期間は5年間を超えず、新薬の販売承認後の総有効専利権存続期間は14年間を超えない。

 

解釈:審査中の遅延に基づいて提出された専利権存続期間補償の計算方法に記載されている「出願人による不当な遅延の日数を差し引く」こととは、出願人が提出した延期請求、回復請求、遅延審査請求、援用・付加請求、中国国内段階に移行するPCT国際出願による32ヶ月の猶予期間の利用等による遅延である。その他、同一の出願人が同一の発明・創作に対して、同日に実用新案専利と発明専利を出願した場合には、この発明専利に対して専利権存続期間補償を請求することはできない。

 

   新薬の販売承認に基づいて提出された専利権存続期間補償請求は、専利権者がその専利において当該新薬に関連する請求項を指定し、証明資料を提出し、指定した請求項に新薬に関連する技術案が含まれる理由及び請求された補償期間の計算方法を説明し、且つ医薬品の専利権存続期間補償中の保護される技術案を明らかにすべきである。つまり、このような専利権存続期間補償は、一つの専利において当該新薬に関連する請求項の一部にのみ適用され、この専利全体が存続期間補償を取得できることを黙認するものではない。

 

適用範囲:2021年6月1日から、専利権者は新薬の販売承認日から3ヶ月以内に専利権存続期間補償請求を提出することができ、権利付与公告日が2021年6月1日以前の発明専利について、専利権存続期間補償請求を提出することができる。2024年1月20日から、特許庁は、上記条項に従い、2021年6月1日以降に提出された専利権存続期間補償請求を審査する。請求された関連専利権が2024年1月20日前に満了しても、特許庁が請求を審査した結果、補償条件を満たしていると判断した場合には、存続期間補償を決定して公告する。補償期間は、元の専利権存続期間の満了日から起算する。

 

十二.出願人は、最も早くて登録料の納付時に特許庁に対し、実用新案権又は意匠専利権の評価報告書の作成を請求可能

 

条項:専利権者、利害関係人及び侵害被疑者は、実用新案又は意匠専利の権利付与公告日以降、特許庁に対し、専利権評価報告書の作成を請求することができ、特許庁は、このような請求を受けてから2ヶ月以内に報告書を作成すべきである。専利出願人は、「登録手続き通知書」の要求に従い、登録料を支払う際に、特許庁に対して専利権評価報告書の作成を請求することができ、特許庁は、その請求を受けてから、専利の権利付与公告日後の2ヶ月以内に報告書を作成すべきである。

 

解釈:改正前の施行細則と比較すると、今回の改正は、更に侵害被疑者が特許庁に対して専利権評価報告書の作成を請求できることを明らかにするだけでなく、出願人が最も早くて登録料の納付時に専利権評価報告書の作成を請求することができると認めた。

 

適用範囲:2023年12月21日に公布された経過措置では、上記条項の発効時期について特に規定されていなかったが、原則として、これらの条項は、出願日が2024年1月20日以降の専利出願に適用される。しかし、実務の観点から、出願人は、2024年1月20日以降、出願日が2024年1月20日前の出願について、登録料を支払う際に専利権評価報告書の作成を請求しても、特許庁は依然として専利の権利付与公告日後の2ヶ月以内に報告書を作成することができる。

 

 

十三.専利の開放的許諾の審査要件を詳細に規定

 

条項:専利権者が特許庁に対し、中国でいずれかの組織又は個人にその専利を実施することを承認する意思を書面で自主的に声明し、且つ実施料の支払い方法及び基準、許諾期間を明らかにした場合、特許庁によって公告し、開放的許諾を実施する。いずれかの組織又は個人が開放的許諾の専利を実施する意思がある場合、専利権者に書面で通知し、且つ公告された実施料の支払い方法、基準に従って実施料を支払った後、専利実施許諾が発効する。この開放的許諾の実施契約の発効後、許諾の当事者双方は、開放的許諾に合意したことを証明できる書面の書類(ライセンシーから専利権者への書面による通知、ライセンシーから専利権者への実施料の支払い証明書等)を以て、特許庁に登記手続きをすべきである。開放的許諾の実施契約の登記を行うことは、専利権者が専利年会費の減額請求を同時に提出したものとみなされ、特許庁が登記を承認した場合、開放的許諾の実施中、出願人は、登記の日から有効期限が切れていない専利の年会費の減額を受けることができる。

 

解釈:新たに改正された審査指南では、専利開放的許諾の取扱いに関する他の要件も規定されている。(一)開放的許諾が取扱われる専利は有効な状態にあり、且つ独占的又は排他的許諾の有効期間にあってはならず、中止されていてはならず、質権設定中ではならず、完全に無効宣告されてはならず、また専利権評価報告書において専利権付与の条件を満たさないものとみなされてはならない。(二)開放的許諾で声明される専利実施料は高すぎてはならず、例えば、固定料金で支払われる場合は、通常2000万元以下であるが、ロイヤルティで支払われる場合、通常売り上げ額の20%以下、利益額の40%以下である。(三)中国国内の組織又は個人が専利開放的許諾を施行し、外国又は香港、マカオ、台湾の組織又は個人が施行する意思がある場合には、「技術輸出入契約登録管理弁法」の規定も遵守すべきである。

 

適用範囲:2024年1月20日から、特許庁は、上記規定に従い、2021年6月1日以降に提出された開放的許諾声明を審査する。

 

 

十四.職務発明・創作の発明者に対する報奨金及び報酬の規定を改正

 

条項:職務発明・創作の専利権が付与された組織は、職務発明・創作の発明者に報奨金を支払うべきである。このような報奨金の支払い方法及び金額について、発明者と約定されておらず、規定制度にも定められていない場合、専利の権利付与公告日から3ヶ月以内に報奨金を発明者に支払うべきである。一つの発明専利の最低報奨金は4000元以上、一つの実用新案又は意匠専利の最低報奨金は1500元以上である。

 

   職務発明・創作の専利が施行された後、専利権を付与された組織は発明者に妥当な報酬を支払うべきである。この報酬の支払い方法及び金額について、発明者と約定されておらず、その規定制度にも定められていない場合、「科学技術成果転化促進法」の規定に従って発明者に報酬を支払うべきである。

 

解釈:改正前後の施行細則を比較すると、規定の職務発明・創作の専利が付与された後の発明者への報奨金が増加した。職務発明・創作の専利の施行後、発明者への報酬については、「科学技術成果転化促進法」では、「職務発明・創作を自ら又は他人と協力して実施した場合には、実装が成功裏に変換され、運用開始後の3~5年間、毎年、この科学技術成果の実装から得られる営業利益の5%以上が発明者に還元される」と規定されている。

 

適用範囲:2023年12月21日に公布された経過措置では、上記条項の発効時期が明らかに規定されていなかったが、原則として、これらの条項は出願日が2024年1月20日以降の専利出願に適用される。

 

 

十五.秘密保持審査の処理手続きを改正

 

条項:中国で完成した発明又は実用新案について、外国で専利を出願する組織又は個人は、中国特許庁に秘密保持審査請求を提出すべきである。特許庁は、秘密保持審査請求を受理した後、請求の提出日から4ヶ月以内(複雑な場合には2ヶ月延長可能)に秘密保持の要否を決定すべきである。決定がなされる前に、審査官は、この発明又は実用新案が秘密保持を必要とする可能性があると判断した場合には、請求の提出日から2ヶ月以内(複雑な場合には2ヶ月延長可能)に出願人に秘密保持審査意見通知書を発行すべきである。

 

解釈:今回の改正は、秘密保持審査通知の発行時間を「請求の提出日から2ヶ月以内にする」と短縮し、元の施行細則における「出願人が請求日から4ヶ月以内に秘密保持審査通知を受領しなかった場合、この発明又は実用新案について外国で専利を出願することができる」という記述を削除した。つまり、出願人は秘密保持の必要がないとの審査決定を待ってから、外国で専利を出願すべきである。現在の特許庁の実務では、秘密保持審査請求のほとんどは、半月程度で審査決定を受領することができる。

 

   ただし、PCT国際出願に関連する秘密保持審査手続きは変更されていない。即ち、出願人が特許庁にPCT国際出願を提出した場合、同時に秘密保持審査請求を提出したものとみなされ、審査の結果、秘密保持の必要がないと特許庁が判断した場合に特許庁は、出願人に特許庁からの通知を待たせることなく、通常の国際段階の手続きに従って審査を進める。審査後に秘密保持の必要があると特許庁が判断した場合には、出願日から3ヶ月以内に登録本と検索本を送付しない旨の通知を発行する。

 

適用範囲:2024年1月20日から、特許庁は上記規定に従い、審査中のすべての秘密保持審査請求を処理する。

 

 

著者プロフィール

   王珍珍氏は2019年に外交学院英文学科を卒業し学士号を取得した。その後、中国人民大学法学院で知的財産権の課程を修了した。同年、当社に入社し、中国特許権取得までの手続きに熟知し、知的財産権に関わる法律コンサルティングなどに豊富な経験を持っている。

 

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