リリースタイム:2023-12-22 来源:北京知識産権法院

    2023年5月30日、北京知識産権法院は、専利権付与・確認に関する代表例トップ10を発表しており、以下は事例6~10である。

 

事例六:アップルとクアルコムの発明専利権の無効審判事件

一審事件番号:(2019)京73行初7916号

二審事件番号:(2022)最高法知行終314号

    典型的な意義:本件は「請求項の更なる限定」という補正方法の理解に関する。本件では、専利権者は独立請求項を含むいくつかの請求項を追加しただけでなく、登録公告された請求項及び明細書に記載されていなかった技術的特徴も追加し、新たな技術案がもたらされたと考えられ、その結果、補正された請求項は社会公衆には予見不可能である。このような補正方法は、元の請求項の保護範囲を狭めることを言いにくいだけでなく、元の請求項間の階層関係にも影響を及ぼし、明らかに無効化手続きにおける請求項の補正範囲をはるかに超えている。判決は、社会公衆の信頼利益と専利権者の技術的貢献との間のバランスを反映している。同時に、本件は国際的に有名なテクノロジー企業間の知的財産権紛争に関しており、知的財産権保護の強化に対する人民法院の姿勢と、市場指向で法的且つ国際的なビジネス環境の構築に向けた努力を示すものでもある。

 

事例七:マバロキサビル前駆体化合物の専利権の無効審判事件

事件番号:(2021)京73行初5028号

    典型的な意義:関係専利で主張されている化合物は、現在世界で唯一の「単回投与」経口抗インフルエンザ薬であるマバロキサビルのプロドラッグに関する。本件では、医薬化合物の分野における難点の一つ、つまりマルクーシュ化合物の請求項が明細書に支持されているかどうかについて検討している。この判決は、明細書に開示されている内容全体、特に効果実施例の分布に基づき、プロドラッグと親化合物との一連の関係とそれぞれの効果実験等を明らかにし、明細書から得られた技術的効果を正確に評価し、マルクーシュの請求項が明細書に支持されていると認定された。同時に、判決は、当事者らの主張に対応するために、マルクーシュの請求項と他のタイプの請求項が明細書に支持されているかどうかについての判断基準に差異はないとも指摘した。本件の判断方法は、このような事件の裁判にとって重要な参考意義を有する。

 

事例八:モーメンツで技術情報の公開案

一審事件番号:(2018)京73行初7134号

二審事件番号:(2020)最高法知行終422号

    典型的な意義:インターネットのセルフメディアの発展に伴い、「モーメンツやQQスペース等の認証アクセスが必要なオンライン空間が、従来技術/設計のキャリアとして利用できるか」という問題に焦点が当てられるケースが増えている。上記ソーシャルプラットフォームは公開性と秘密性を兼ね備え、ここで記載された内容が専利法の意味上の従来技術/設計に該当するかどうかについては、審査及び司法実務においてかなりの意見の相違が存在する。本件では、QQスペースが公開性と機密性という二重の特徴を兼ね備え、QQスペースのフォトアルバムの内容が従来設計に該当するかどうかは一概には言えないが、QQスペースの主な用途、ピクチャのアップロード時間、ピクチャの公開状況等の要素を総合的に考慮し、公衆が関連情報を入手できるかどうか、及びこの情報が公知の状態になった時間を判断する必要があると考えられる。本件は、インターネット環境における従来技術/設計を認識するための判断ルールを提供する。

 

事例九:国際繊維グループの発明専利権の無効審判事件

事件番号:(2018)京73行初3826号

    典型的な意義:本件では、裁判所は、織物の糸種、繊度、織密度、織組織、フィラメント糸とチョップトファイバー糸との割合等の複数の要因の重ね合わせの、柔らかさ及び強度の性能という二つの技術的効果に対する影響を分析し、関係専利のどちらか一つの技術的効果が当業者にとって予期せぬ程度まで達した限り、予期せぬ技術的効果を達成したと考えられると認定された。しかし、本件では、「予期せぬ技術的効果」だけを進歩性の判断における考慮事項とするのではなく、関係専利の技術案の非自明性を判断し、それを補足的な考慮事項とし、それによって進歩性の判断における裁判官の内的検証を深めた。本件は、専利権付与・確認の司法実務において、「予期せぬ技術的効果」の達成に基づく進歩性の主張が裁判所によって支持される数少ない事件の一つであり、典型的であり、技術的効果によって進歩性を強調する専利にとって重要な参考価値を有する。

 

事例十:光学細胞とファーウェイの発明専利権の無効審判事件

事件番号:(2019)京73行初10816号

    典型的な意義:本件では、専利権者が主張する解決される実際の技術的課題は、被告決定で認定された「PDCPステータスレポートの特定の形式を如何に設定するか」ではなく、「PDCPサービスデータユニットの受信ステータスを報告する際の無線リソースの効率を如何に改善するか」である。判決は、技術的効果に異なるレベルが含まれる場合、すべてのレベルの技術的効果が実際に解決される技術的課題として認定されるべきではないとした。どのレベルの技術的効果を「実際に解決される」技術的課題として認定する必要があるかは、どの課題が最も近い従来技術において「解決すべき」課題であるかによって決まる。本件について、効率の「向上」の問題は、異なる形式の受信ステータスレポートが存在し、それを比較できる場合にのみ関するが、引用文献には受信ステータスレポートの何れかの形式が開示されていないため、引用文献が解決すべき技術的課題は、効率を「どう向上するか」ということに関せず、依然としてステータスレポートの形式を「どう設定するか」という段階にある。本件は、進歩性の判断において実際に解決される技術的課題を正確に認定することに対し、規範的意義を有する。

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